栗園醫訓五十七則 解説(9)
一、汗、吐、下、和、温の別、能くけん別すべし。
漢方の治療法はここにあるように、汗、吐、下、和、温の五法を以って行います。(けん別のけんの字が出てこない・・・。明らかにして分けることの意味です。)
五法については傷寒論講義(浅田先生の門人、木村博昭先生の講義)から拾うと、以下のような感じです。
汗法 表証の治療。太陽病の正治法。表証に輕重あり。発汗過度を最も戒むべし。
吐法 厥陰病の治療に用いる。其の適用範囲狭し。吐法の主剤は瓜蔕散なり。
下法 下剤を用い胃部にある邪熱を下し去るの法。陽明病裏實の治法。証の輕重に随って選用す。
和法 清涼剤を用いて邪熱を和解し去るの法。熱半表半裏にあるときは汗法、吐法、下法、倶に禁忌なり。中間に於いて熱を清解せしむべし。和法は少陽病の正治法と為す。主剤は小柴胡湯なり。
温法 温剤を用いて陽を回らし、寒を散ずるの法。専ら三陰病の治療に用いる。
※厥陰病は寒熱錯雑の証なるが故に、其治療には、或は涼薬を用い、或は温薬を用い、汗吐下和法の五法を其の宜に随って施すなり。
吐法はさすがに使うことはありませんが、基本はこんなにシンプルなんです。
一、故なくして処方を転ずべからず。山東洋常に戒めて曰く、医自易と云う。
山東洋というのは、山脇東洋のことです。
「医自易」は、「医、自ずから易(かえ)る」ということ。
安易に処方を変えるなということです。
これも難しいところですね。判断に悩んで、こっちにいったりあっちにいったり・・・。
実は結構な偉い先生の本を読んでも、途中で迷ってらっしゃるのが解りますし、非常に悩んで決断されたということを書いています。
私のような凡人には…
一、陰、陽、表、裏は病位なり。発、攻、温、清は法の極なり。大小二一は方の製なり。此の三者を詳らかにして、治療精細にすべし。
発、攻、温、清は、前に書いた五法を言い方を変えているのだと思います。
発は発汗・発表の法。
攻は、攻裏の法、下法に通じます。
温は五法のうちの温法と同じ。
清は清熱で長谷川弥人先生の頭注は白虎湯とありますが、攻で陽明病の治法を出しているところをみると、これは少陽病の治法である清熱解毒、五法で言うところの和法を言うのではないかなと思います。
大小二一という言葉は辞書を引いてもわからないですよね。
大小は、大柴胡湯、小柴胡湯、大青竜湯、小青竜湯、大陷胸湯、小陷胸湯、大承気湯、小承気湯のように大小がつく薬方のことを指していると思われます。
二一は、桂枝二越婢一湯、桂枝二麻黄一湯のことでしょう。
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解説(10)につづく