栗園醫訓五十七則 解説(8)
一、薬剤の再煎、麻沸及び先煮、後煮の別、混ずべからず。
漢方薬を煎じる時、今は一般に常煎方といってまとめて煎じて終わりですが、古典には漉してから再度煎じろとか(柴胡剤の再煎)、麻黄は先に煮てとか、煎じ方の指示も色々と細かくあるものですから、なるべくそれに従えということです。
一、湯、散、丸の分別、研究すべし。
(此の三法、薬病各宜しき処あり。乃ち別ある所以なり。婦人妊娠中、丸散多くして湯剤少なし。以って其の端を悟るべし。)
婦人妊娠中は当帰芍薬散、当帰散、白朮散、乾姜人参半夏丸、確かに丸散多いですね。
さて、これを漢方的に解釈するとなると・・・うーん、うーん。
薬方によって飲みやすい方法、効かせやすい形があるのですよね。
湯、散、丸はなるべく原典に則ってと思ってそれらの製剤を用意しています。
一、薬の修治は、製して毒を増すものは必ず製すべし。
毒を増すというとビックリしますけど、ようは薬効を増すということです。
前に吉益東洞の薬徴を引用したときにも書きましたが薬効のあるものは毒と呼びます。
生薬を用いる時の伝統的な加工法『修冶』(今一般に「しゅうじ」ですが「しゅち」と習いました)というのがあります。現在の日本ではほとんど省略されているのが現状ですが、薬効に関わる部分では必ず修冶をしろということです。
修冶に関する資料も揃えて、出来ることはやっていいるのですが、なかなか実践で学ぶ機会が少ない分野になってしまいました。
一色直太郎の「和漢薬の良否鑑別法及調製方」は復刻版が手に入ります。
一、病、上焦にあるものは、必ず薬剤を軽くすべし。又腹満、水腫等の如きは薬剤を大量にすべし。
長谷川弥人先生の頭注に「大小陷胸湯や分消湯などの例である」とあります。
病上焦に対して大小陷胸湯、腹満水腫の如きに対して分消湯が対応しているとのことですが、病上焦というのは挙げればもっといっぱい在ると思うのです。
適量は年齢や体格的な要素の他に、病気の上中下で上部のときは少なめに、中から下にあって腹満、水腫の如きは多めに使えということです。
一、蚘蟲を兼ぬるものは、先ず駆虫の剤を与へ、而る後に本病の薬を与うべし。
蚘蟲は、「かいちゅう(蛔虫)」のことです。
お腹に虫がいるときは、まず駆虫(虫下し)してから、本来の病気に対する治療をせよということです。
今の日本は虫がいるのはまず珍しいですけどね。藤田紘一郎先生の回虫の話を思い出します。
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解説(9)につづく