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栗園醫訓五十七則 解説(13)

一、病人其の勢猛烈にして対証の薬を用ひて反って扞格の勢益々熾んになる者は、彼の幕にて鉄砲を受くるの術を行ふべし。是万病に望む第一の心得なり。

病気に対して真正面の薬方を用いて益々勢いがさかんになる者は、「幕にて鉄砲を受ける」ような真正面から病気とぶつかるものではなく、やんわりと包むようなもので治療しなさいと。

扞格(かんかく)、熾ん(さかん)と読みます。

長谷川弥人先生は浅田流漢方入門で「柔能く剛を制す」を引き合いに出され、「香蘇散で頑固な便秘を治療した」例を出されています。

矢数道明先生も漢方治療百話の第2集の22話で和田東郭先生の言葉として「幕にて鉄砲を受ける」事例を書いていらっしゃいます。(この事例はややっこしくてあまり何が良かったのか解りにくいんですが、考え方として大いに参考になります)

「彼の幕にて鉄砲を受くる・・・」の「彼の」は江戸時代の享和年間(1800年頃)に活躍された和田東郭先生のことを言ってるのでしょうかね。

一、服薬の法、徐服、頓服、冷服或は露宿、或は時に先だって服すなど、よく其の時合を考へて、夫々の宜しき処に随ふべし。熱因寒用して、附子を冷服せしむること、最も妙用なり。

薬の飲み方、飲ませ方です。漢方薬だからって、全部煎じて熱いまま飲むって訳じゃないのです。
私はおおよそ三陰三陽の病位を元に服用温度は考え、気血水で水は熱があっても後に冷えやすく、温服を薦めています。

つわりの時に温かい煎じ薬などは飲めない場合もあります。
服用温度は考慮したいところです。

それから服用時間です。
アレルギー性鼻炎などは起床後すぐに飲んだほうがいい場合が多いなと思います。
症状が強く出る時間を抑えたほうがいいですし、西洋医学の時間薬理的な発想と同じです。

一、医に大家小家の別あり。大家の療治風をよく見習ふべし。小家の療治を学ばば、自然と小刀細工になり、上達せぬものなり。

なるべく立派な先生のやり方を学べということですね。
そこそこの先生のやり方をみていたら、上達できないと。

私自身、これはよく出来たと思っても、師匠と比べてみると「まだまだ」と思います。
だからわざわざ遠くまで習いに行きます。

小家で終わらないように、事あるごとに師匠のところへ顔を出すように心がける。
(「スパイ」とも言われています・・・)

一、医按を書くには冠宗奭の『本草衍義』凡例の按、許叔微の『本事方』の按を主とすべし。倉公伝の按は古文なれども、儒者の手になりて学びがたし。

不勉強で読んだことがないので、何がどうなっているのやら解りません。

一、医学の次第、周には四職とす、漢に医経経方と定むれども、其の書伝はらず。宋には脈病証治の四科とす、是を規則とすべし。

浅田宗伯先生は生徒に教えるにあたっては、四科を基本としたようです。

1 脈・・・浮沈、遲數などの脈証の分類による診断法
2 病・・・病因
3 証・・・陰陽、表裏、寒熱、虚實など。
4 治・・・汗吐下和温の五法


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解説(14)につづく